スタア誕生

過酷な海と船のロケで風邪でダウンした大スターは

あの夜出会った歌姫が忘れられず、町へ探しに行く。

●今回の「船」が登場する映画

A Star Is Born

1954年　アメリカ映画

●あらすじ

有名な映画スター、ノーマンがハリウッド映画基金募集ショーの舞台に酔って現れた。その時ちょうど舞台に出ていたジャズ歌手のエスターは、酔ったノーマンを巧みにリードし、その場をうまくとりなした。家に戻ったノーマンは夜中に目覚め、一人飲みに出る。クラブで歌うエスターに会い、その歌声に魅了されたノーマンは、「君は必ず成功する。大きな夢をつかめ」とエスターに映画出演を勧める。エスターは、ノーマンの言葉が大スターのお遊びだとしか思えなかった。ピアニストのダニー率いる楽団の公演でサンフランシスコに旅発つ予定を断り、大きな夢にかけてみることにした。翌朝、ノーマンは映画の撮影で海へ出発する。その間、人に託してエスターと連絡を取ろうとするが、どこに住んでいるのかもわからない。エスターはノーマンからの連絡を待ち続けるが、ついには家賃が払えず出て行き、シャンプーのコマーシャルの歌を歌ったり、ハンバーガーショップの売り子のバイトをしながら、ノーマンが火をつけた「スタア」への道を一人歩んでいた。過酷な海のロケから戻ったノーマンは自らエスターを探しに行き、二人はようやく再会する。

●ここに注目！

1937年公開、ジャネット・ゲイナーとフレドリック・マーチ主演映画のリメイク。1976年にバーブラ・ストライサンド主演で３度目のリメイクがされている。

本作は、興行的に失敗した。後悔から44年後、お蔵入りしていた音声部分を足し、紛失した映像場面はスチール写真をつないで、完全版として約３時間にも及ぶ長編を発表した。

今回の主演は「オズの魔法使い」のジュディ・ガーランド。4年ぶりの映画主演である。1940年代後半から、精神不安定状態となり薬物依存で、仕事に支障をきたしていたジュディだったが、本作では外見的には当時30歳とは思えないやつれた感じはあるものの、歌に踊りに演技にと、本来の魅力を見せつけてくれる。しかしながら、撮影の現場では、作中のノーマンのように、彼女の行動もかなり乱れていたようだ。作中ではアカデミー主演賞を得るが、現実はアカデミー主演賞にもノミネートされ、本命と言われていたが、グレース・ケリー主演「喝采」に敗れている。

●ここに「船」が登場！

エスターと出会った翌日から、ノーマンが出かけた映画のロケ地、それは海だった。撮影期間は５〜６週間。撮影の船は小さく、そこに25人ほどのスタッフがずらり。5人のスタッフが大きなレフ板を抱える中、ノーマンは脱出用ゴムボートに乗って海に漂っていた。この時代の映画撮影の様子がリアルにわかるシーンだ。