船や汽車や気球を乗り継いで、時差に気づかず世界一周!
飛行機のない時代、財産全部をかけた冒険物語
今回ご紹介する「船が出てくる映画」
Around the World in 80 Days 1956年 アメリカ映画
●あらすじ
1872年、ロンドンの紳士が集う「社会改良クラブ」では、カードを楽しみながら銀行強盗の話題が持ちきりだった。鮮やかな手口で犯人は逃げ失せて、一向に捕まらないと言う。「3カ月で世界一周できる時代、犯人はもう世界のどこかに逃げているさ」という仲間の言葉に、「私なら80日間で世界一周するね」と答える一人の男がいた。
彼の名前はフィリアス・フォッグ。謎の金持ちで独身、几帳面で時間に厳しいが、カードゲームには熱くなりすぎる性分だ。「それは無理な話だ。出来ない方に5000ポンド」とメンバーたちの売り文句に、「その話、受けて立とう。今夜出発し、9月21日土曜日の午後8時45分までに戻る」とフォッグは、雇ったばかりの従僕パスパルトゥを従え、出発する。自らの全財産の半分を旅費に当て、残りの半分は掛け金にした。もし80日間で世界一周が果たせなかった際には、彼は全財産を失うことになる。 しかし旅は予定通りには行かず。汽車の代わりに気球に乗っては違う地に着いたり、インド人女性を救ったり。そんなフォッグ一行を密かに追う刑事も巻き込みながら、約束の21日午後8時45分が刻々と迫ってくる。
●注目!
世界12カ国で撮影され、日本にも1955年にロケ隊が滞在し、3000人のエキストラが参加した。主な撮影場所は横浜、鎌倉で、映画では鎌倉の大仏が印象的に使われている。日本に住む者としては、この映画で描かれた日本の情景に首を傾げることも多々あり、これが当時の外国人に大きく日本のイメージを焼き付けたと思うと少々複雑な気持ちである。
アカデミー賞は、作品、脚本、撮影、編集、音楽の5部門で受賞した。気球のシーンで流れるビクター・ヤングの音楽は誰しも耳にしたことのある名曲である。
主役のフォッグに「ナバロンの要塞」のデビッド・ニーブン、従僕のパスパルトゥにコメディアンのカンティンフラス、インドのアウーダ姫にデビューしたばかりのシャーリー・マクレーンが登場。さらに、フランク・シナトラら有名な俳優たちが数十人もチョイ役で画面に華を添えている。この作品がきっかけで「カメオ出演」という言葉が生まれた。
●ここに船!
「快速艇」でフランス・マルセイユへ 。マルセイユから「モンゴリア号(MONGOLIA)」でスエズへ 。スエズから「モンゴリア号(MONGOLIA)」でボンベイへ。カルカッタから「ラングーン号(RANGOON)」で香港へ。ここで二手に分かれ、パスパトゥは「カーナティック号」で上海経由で横浜へ 、フォグとアウーダ姫はジャンク船で横浜へ。合流して、横浜から船でサンフランシスコ へ。ニューヨークから貨物船「ヘンリエッタ号」でリヴァプールへ。合計8つの船移動が登場する。
地球が丸いという説を最初に唱えたのは、紀元前6世紀ごろの古代ギリシアで活躍した数学者・ 哲学者ピタゴラスである。ピタコラスと言えば、中学3年で学習した「ピタゴラスの定理」(三平方の定理)を思い出す人が多いと思うが、クルーズファンなら、ピタコラスとその学派の人たちが、船が遥か沖に遠ざかるにつれて船体が水平線に隠れ、やがてマストも隠れるという観測的事実から「地球が丸い」と気づいたという逸話の方を最初に語ってほしいものだ。
「地球が丸い」ことの実際的な証明をしたのは、マゼラン一行の世界一周航海である。1522年、スペインに戻ってきた彼らは乗組員が記録していた日付が、実際のスペインの日付より1日遅れていたのに気づく。乗組員たちは自分たちの記録の正しさを主張し、この騒ぎはスペイン国内だけでなくローマ教皇まで巻き込む事態にまで発展した。 世界各地の地方時間は経度15度ごとに1時間の差がある。地球を1周すれば1日のずれを生じることになる。この地球規模の手品のようなトリックは、1872年に発表されたジュール・ヴェルヌの冒険小説「八十日間世界一周」に効果的に使われた。戯曲として発表されていた作品で、小説発刊とトーマス・クック社主催による世界一周ツアー初回が重なり、多くの読者を魅了した。
時差についてもう少し書き加えておく。
東回りだと48時間の日が生まれ、西回りだと消滅する日ができる。19世紀に入ってからは慣習的に太平洋の中央部で日付を変えることが行われていた。 1884年にワシントンで開催された万国子午線会議で、経度0度の線がグリニジを通ることが決められ、それに付随して、基本的に経度180度の線を日付変更線とすることが定められた。地球表面で北極と南極をつなぐ想像上の線であり、実際に線が引かれているわけではもちろんない。 生活に支障のないように主に海の上に設けられたが、アラスカとキリバス共和国ではちょうど陸上に日付変更線が来るため、それを避けるように配慮して線が設けられている、そのため地図上で見ると、ハワイの南で大きくコの字型に変形している。
さてクルーズにおいては 日付変更線はビックイベントのひとつである。日中なら「通過の瞬間をデッキで迎えましょう!」との呼びかけ、みんなでカウントダウン。「……5・4・3・2…1!!」同時に「ボォ~~!!」と力強い本船の汽笛の音が鳴り響く、そんなイベントも味わえるだろう。
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