麗しのサブリナ

〝客船シネマ〟の印象強いが、船そのものの登場回数は少ない。

フレンチライン「リベルテ」が、恋の小道具に!

今回ご紹介する「船が出てくる映画」

Sabrina 1954年 アメリカ映画

●あらすじ

主人公サブリナは大富豪ララビー家お抱え運転手の娘で、ララビー家の次男デイヴィッドに恋をしている。父親は身分違いの恋を諦めさせようとパリへ送り、料理学校へ行かせることにした。2年後、見違えるように美しくなって帰国したサブリナに、デイヴィッドは一目で心を奪われる。それを苦い顔で見ていたのがライナスだった。社長を務めるララビー産業の取引先である財閥令嬢と弟の結婚で、事業拡大を狙っていたからだ。邪魔になるサブリナに近づき、「リベルテ」でフランスへ送り返す計画を企てたライナス自身も、サブリナに惹かれていく。

●注目!

ララビー産業のオフィスは、マンハッタンの中心を通る30ブロードウエイのビル。室内から見た窓からの風景はハドソン川しか見えないことから、高層階にあることがわかる。マンハッタン島のハドソン川沿いにズラリ、櫛の歯のように桟橋が並んでいるのがニューヨーク港の特徴だ。現在も残る桟橋は、客船がアメリカへの旅の主流であったころの名残である。かつては汽船会社それぞれ自社専用桟橋を持っていた。

●ここに船!

1818年、ヨーロッパと北米大陸を結ぶ大西洋航路が始まった。アメリカ・ブラックボールライン社の帆船によるリバプール〜ニューヨークの航海は風任せだったので、最短で16日、最長で73日かかったという。 1833年、蒸気船による最初の大西洋横断が成功。その4年後に定期船航がスタートする。世界各国で汽船会社が誕生し、ビジネス競争を激しく繰り広げた。船の優位性をアピールしたい大西洋横断航路運航会社らは、「ブルーリボン賞」を設けることにした。大西洋を最速横断した船舶に与えられる賞である。賞の獲得は国や船舶会社にとっての栄誉だけでなく、乗船する船客にもステータスとなった。 「リベルテ」は、フランスが戦時賠償で得た北ドイツ・ロイドライン「オイローパ」を改装した船である。国の威信を賭け、各船は国の資金や技術協力を得て最速横断記録の更新に挑んでいた時代の真只中であった1930年、オイローバは完成した。搭載力機関を大型化、船体を拡張し、当初計画3万5000トンから5万トンに設計が変更されたのも、ブルーリボン賞を狙い、巡航速度27・5ノット、大西洋を5日で横断できる高速仕様にするため。その甲斐あり、1930年と1933年の2度にわたり受賞している。  

1939年に第2次世界大戦が勃発すると、どの客船も戦場に駆り出された。英本国侵攻作戦の兵員輸送船として徴発されたが直前で作戦中止に。低速、強度不足、搭載機数の少なさ、高速客船として設計されたがゆえの高燃費のせいで、補助空母改造計画も断念。戦後はアメリカの兵員輸送船として働いた。 フランスは、「洋上の宮殿」と謳われた華麗さと就航期間の短さから、神格化された「ノルマンディー」を戦前所有していた。それに代わる客船として白羽の矢が立ったのが、オイローパだった。ノルマンディーの調度品を設置し、〝自由〟を意味する「リベルテ」という船名も与えられた。  本物のフランス料理とヨーロッパ式の洗練されたサービスを提供する〝フランスの客船リベルテ〟は米国人観光客にとって憧れの存在になり、絶大な人気を誇った。映画が1954年公開なので、客船として油が乗っている頃の映画出演だ。ちなみに、映画ではニューヨーク~パリだが、「リベルテ」が実際に就航していたのは、ニューヨーク~サザンプトン航路である。「SSフランス」就航を機に、1962年イタリアで廃船スクラップとなった。

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クルーズ映画ライター あいさわみき が 船が出てくる映画を気ままにコツコツ書きまとめています。 船の映画 船が出てくる映画 船が舞台の映画 船が登場する映画 あらこんなところに船が!という作品に出会うと、最高にハッピーです。 なので、ハッピーのおすそ分け、それがこのサイトのコンセプトです。