ナイル殺人事件

広大なナイルを下る豪華客船で起きた連続殺人事件。

偶然、船に乗り合わせていた私立探偵ポワロが捜査に乗り出す。

●あらすじ

世界で一番長い川、ナイルを下る豪華客船で、ハネムーンを楽しんでいた美貌の富豪令嬢リネットが殺された。凶器はピストル。壁に「J」の血文字が残されていたことから、リネットに婚約者を奪われた女友達ジャクリーンに疑いの目が向けられる。偶然、船に乗り合わせていた私立探偵ポワロが捜査に乗り出す。そして第二、第三の殺人が起こる。

●注目！

1937年に名探偵ポワロシリーズとして発表後、作者アガサ・クリスティの手で舞台脚本に書き直され、1946年にロンドンで上演された。2004年には『名探偵ポワロ』シリーズでテレビドラマ化もされている。

映画では、ジェーン・バーキン、ベティ・デイヴィス、ミア・ファロー、オリヴィア・ハッセー、マギー・スミスと、この時代を代表する女優たちがずらり揃っている。

●ここに「船」！

船の話をする前に・・・

ポワロたちが乗船前に宿泊しているホテルは「オールドカタラクト」で、アスワンのナイルのほとりに建っている。ヨーロッパからの観光客を受け入れるためにトーマス・クック社が1899年に建築した、英国調コロニアル様式の５つ星ホテルだ。撮影した時の写真などが館内に飾られている。

ちなみにトーマス・クック社は、「世界最初の旅行代理店」ともいえる存在で、設立者のトーマス・クックはキリスト教の伝導師だった。1841年の禁酒運動大会に、信徒を数多く送り込むため、列車の切符の一括手配を考えだし、鉄道を割安料金で乗れるようにしたのをきっかけに、一般の団体旅行を扱い始めた。1872年に、世界一周団体旅行も始めている。

話は映画に戻って、船の話。

密室殺人事件の舞台の船の名は「カルナック号」。名前は、エジプト、テーベ近郊の地名であり、神殿から付けられている。1904年建造「メモン号」を、200万ドルかけて改造されたもの。15室しかないため、撮影中は大女優たちも相部屋に余儀なくされた。その微妙な緊張感が映画の中で繰り広げられる愛憎劇に大いに活かされたようだ。

さて改造にあたって、船のモデルにしたのは「スーダン号」。ヴィクトリア女王がエジプト･ファド国王に贈呈するためにトーマス･クック社に命じて建造させたナイル最初の豪華客船だった。1885年建造のこの外輪蒸気客船は「名探偵ポワロ」シリーズとしてテレビドラマ化された2004年作品に登場している。